オストメイト対応トイレと探し方【認定看護師 解説】

オストメイト対応トイレと探し方

オストメイトとはさまざまな病気や障害、事故などが原因で、ストーマと呼ばれる便や尿の出口を手術によりお腹に取り付けている人たちのことを呼びます。

おなかに何か特殊な機械を付けているわけではなく、排泄物を一時的に受けるストーマ装具(パウチ)をストーマ部位に装着します。

オストメイトの人口はおよそ20万人で、男女比はおよそ6対4、平均年齢は70歳を超えています。

駅や病院などの公共機関でオストメイトのための設備があるトイレにはオストメイトマークが多く見られます。

本記事では、オストメイト対応トイレの実際についてまとめましたので、話していきます。

ストーマにはどういうものがあるの?

ストーマにはどういうものがあるの?
ストーマの種類には大きく分けて『消化管ストーマ(人工肛門)』と『尿路ストーマ(人工膀胱)』とがあり、消化管ストーマと尿路ストーマの両方を取り付けている場合はダブルストーマと呼ばれています。

オストメイト対応トイレは普通のトイレとどう違うの?

オストメイトの方がストーマ装具や汚れ物を洗うための汚物流し、汚れた腹部を洗うことができる水栓器具などを設けたトイレです。

オストメイト対応トイレの主な設備

  • 汚物流し台と付随設備(混合水栓・ペーパーフォルダー・水石鹸入れ)→腹部の洗浄/ストーマ装具の交換/衣服・使用済みストーマ装具の洗濯
  • カウンター→ストーマ装具・用品などを置くスペース
  • 各種フック→小物入れ用・衣服・手荷物用フック
  • 化粧鏡→ストーマ装具の装着時に腹部を映す鏡
  • 汚物入れBOX(足踏み開閉式)→使用済みストーマ装具の廃棄など
  • 収納式着替え台→服の着替え用

一般のトイレをオストメイト対応トイレにするには

一般のトイレをオストメイト対応トイレにする

  • 簡易的なオストメイト対応トイレに取り換える、今ご使用の便座をオストメイト対応の便座に取り替える→便座のみ交換します。
  • トイレに『パウチ・しびん洗浄水栓付背もたれ』を取り付ける→『パウチ・しびん洗浄水栓付背もたれ』に対応していないトイレをご使用の場合は対応トイレに交換する必要があります。
  • 機能的なオストメイト対応トイレにリフォームする。今お使いのトイレスペースに余裕があればそのスペースを利用して設置する→空いているスペースに給排水工事を施し、オストメイト専用トイレを設置します。
  • これまでご使用のトイレはそのままで、別の場所にオストメイト専用トイレを設置する→建物のどこかのスペースを改造します。給排水工事や仕切り壁・扉を設置し、オストメイト専用トイレを取り付けるため比較的大掛かりな工事が必要です。
  • トイレスペースを広くし、洋式トイレとオストメイト専用トイレを設置する→トイレスペースを広くする大工工事と給排水工事、オストメイト専用トイレの取り付けを行うため大掛かりな工事が必要です。

オストメイト対応トイレにするための費用目安

オストメイト対応トイレにするための費用
オストメイト対応トイレにするには、商品代金の他に工事費がかかります。

大掛かりなものになると大工工事や給排水工事が加わりますのでその分工事費は高くなります。

病気や事故などで治療を受け、排泄の場所を変更しなければならなくなったオストメイト。

排泄の仕方は違っても日常生活はもちろん、学校や仕事、スポーツや旅行など楽しんでいます。

妊娠・出産されている方もたくさんいます。便や尿の出るところが違うだけで、何も特別なことはないのです。

肉体的な負担だけでなく、精神的な負担を軽くするためにも今後オストメイトのための設備がますます必要とされます。

オストメイト対応トイレを探すには

オストメイト対応トイレを探すには
オストメイトJP
日本全国のオストメイト対応トイレ情報を検索できるWEBサイトです。

オストメイトトイレ一覧表(兵庫県下650箇所)
(公)日本オストミー協会兵庫県支部提供のオストメイト対応トイレ設置場所リストです。
市区町別に掲載されています。
PDFデータにですので、ダウンロードしてご活用ください。

車いす・シート・オストメイト対応トイレ設置駅(大阪市営地下鉄
大阪市交通局により作成されたオストメイト対応トイレ設置駅の路線図です。
地下鉄及びニュートラムの全駅、市営交通案内コーナー、市営交通アクセスガイド、各区役所、総合医療センター、十三市民病院、住吉市民病院、大阪市立大学医学部付属病院でも配布されているそうです。

安心して外出するために

安心して外出する
オストメイトの歴史や種類を知ることで安心して外出時に利用することが出来るので、それぞれ解説していきます。

オストメイト対応トイレの始まり

平成7年1月に発生した阪神大震災でのオストメイトの惨状から始まったとされています。

この活動が他市にも広がっていくうちに、習志野市の商工会婦人部の方たちからの寄付と習志野市障害福祉課の協力で平成10年5月、習志野市庁舎に日本初のオストメイト対応トイレが設置されました。

当時はオストメイトトイレの概念がないので、設備は朝シャンドレッサー(水石けん、電気温水器、上下に動くシャワ一ヘッド、自在バルブ)が設置されました。

その後、日本オストミー協会、行政、トイレメーカー、鉄道会社、高速道路会社などの理解と協力や法律の整備、ユニバーサル社会政策により全国に設置が進んできました。

設置が義務付けられている場所はおおむね設置面積が2,000㎡以上の公共の人が出入りする建物です。

現在では、大規模小売店にも設置が進んできたので、安心して買い物ができるようになりました。

高速道路のSAでは既設トイレの便房にオストメイト設備を増設した所もあり、和式便器とオストメイト設備が同居している光景も見られます。

オストメイト対応トイレの種類

ここでは5種類のオストメイト対応トイレについて説明していきます。

▼パウチ・しびん洗浄水栓

パウチ・しびん洗浄水栓
洋式便器に取り付けられている初期の設備で、鉄道会社の駅などに多く設置されています。

便座を上げてパウチをすすぐことができますが、滞水面から水栓までの間隔が10cmしかなく、パウチから捨てた汚水でパウチや手が汚れたり、便器に付着した尿や汚物で衣類が汚れることもあり、不自然な姿勢での作業になります。

▼便器式簡易型

便器式簡易型
洋式便器に取り付けられていますが、洗浄ノズルは未使用時には水タンクの側面や便座背もたれ内部に収納されていて、使用時に水タンク前面に引っかけたり、竿を倒してパウチをすすぐことができます。

吐水口が高いので水勢が強いと便器や床面に水が飛び散り使用後の後始末が大変なので、水を少なめに出すのかコツです。

シャワーヘッドを壁面に引っかけているタイプの物もありますが、固定できないので手がもう一つ欲しい感じがします。

家庭用として電気温水器とセットのパウチクリーンという製品もあります。

▼洗浄流し(汚物流し)

洗浄流し(汚物流し)
水栓と混合水栓で温水が出るものがあり、本格的なオストメイト対応設備です。

楽な姿勢(立位)で汚物を捨てる。パウチをすすぐ、取替える。ストーマの回りを拭く、装具を貼り替えたり汚物で汚れた衣服を洗ったり身体を拭くことができます。

温水が出ない水道水のみの場合は水勢が強く、飛び散るものがあるので気をつけましょう。また冬季にはパウチが硬化してすすぎにくく、汚れも落ちにくいです。

▼洗浄流し(シャワー)

洗浄流し(シャワー)
上記の洗浄流しに加えてシャワーヘッドが設置されています。

流しの縁に腹部を当てて汚れたストーマや腹部を洗うことができます。

温水が出るので汚れが落ちやすいし、特に冬季には助かります。

まれに水しか出ないものがあります。大多数の設備がこのタイプです。

最近はデザインの良い新型もチラホラ設置されています。

見た感じが良いのと洗浄水量が少なくて省エネタイプなので優れていますが、縁が弓形に出張っているものは腹部を強く押し付けないと横から温水が漏れやすいです。

逆に多少凹面の物はフィットしやすいです。

▼ジャワメイト

ジャワメイト
洗浄流し(シャワー・温水)の機能プラス押しボタン操作により洗浄流しの高さが可変(60~80cm)できる物があり、ストーマの高さに合わせて調節して使用できて、縁も凹面に湾曲して腹部にフィットしやすく楽に作業ができます。

デザインも汚物流しのイメージはなく、オストメイト対応トイレのユニバーサルデザインです。

洗浄流し(汚物流し)以外に必要な設備

健常者が外出時に公共のトイレを利用する場合でも、便器があるだけでは不便で荷物置台やフックがあれば便利ですが、オストメイトもそれなりの付属設備が必要です。

水石けん、ペーパー、カウンター(装具や用品を置く)、ダブルフック、化粧鏡、汚物入れBOX、衣服・手荷物用フック、収納式着替え台(フィッティングボード)など

オストメイト対応トイレの使い方

説明をする女医
オストメイトや必要な人が自分に便利な方法で自由に使えばよいのですが、一般的な使用方法について書いてみます。

汚物を捨てる

この作業は洋式便器でもできますが、健常者の排便に比べて排泄口が腹部にあり高いので、上着を脱いだり便器に横座りしたりして衣服や身体を汚さないように細心の注意が必要ですし、不安定な姿勢での作業になります。

洗浄流しを使えば立位で楽に捨てることができます。捨てた便が陶器にこびり付いて洗浄水を流しても残ることがあるので、トイレットペーパーを短冊形に折りたたんで流しの縁から垂らしたり、水溜りに捨て紙をしてその上に出せば後始末が楽です。

パウチをすすぐ、取替える

ワンピースドレーンタイプはシャワーヘッドを使います。ツーピースタイプの場合はパウチを外してすすいだり洗えます。

温水の温度が高いほど汚れが落ちやすいです。

温水器の貯湯量は3リットルの物が多いので、出湯量が多いとだんだん冷たくなります。再加温は20分程度かかります。

ストーマから便が出そうな時は下半身の衣服を脱いだり、陶器の縁に腹部を当てます。

あらかじめ「赤ちゃんのおしり拭き・お出かけ用・トイレに流せる」などで陶器を拭けば清潔です。

汚物入れが備え付けられていても、汚れたパウチを入れて捨てるためのポリ袋は必携です。

面板を取替える、腹部を洗い流す

水石けんで腹部を洗い、シャワーで洗い流します。

化粧用コットン等があれば便利です。

汚れた衣服を拭く、すすぐ

濡れた衣類はペーパーを折りたたみ裏表に当てて押えたり、壁面に押し付けたりして水分を取ると早く乾きます。

オストメイト対応トイレは安心感を与える

看護師の女性
皆さんの中には外出中に便や尿が漏れたり、衣服が汚れた方もいると思います。

またはパウチが破裂しそうになりハラハラしたり、長時間の外出を控えたり、外出する時には食事制限をしたり、美味しいものを食べたいけれどがまんしたりと、いろいろあると思います。

外出中に緊急事態が発生した時にはくさい、汚い、はずかしい・・・と、パニックになり、その場から消えてしまいたいと思います。

もしオストメイト対応トイレがある場所をあらかじめ知っていれば、とにかくそこへ逃げ込めます。

逃げ込んでから一息ついて気持ちを落ち着けると、何とかはすかしくないような処置ができるものです。

外出する時にオストメイト対応トイレの設置場所を把握しておけば、万一の時にも何とかなると思って安心して外出しましょう。

経験のない人も一度はオストメイト対応トイレに入ってどのような設備があるかを見たり、水栓をひねってお湯を出して確かめておきましょう。

オストメイト対応トイレの参考情報

訪問看護という仕事
日本オストミー協会の調査やブーケアンケートによると外出時に不安を感じることがある人はオストメイト全体の64%~70%で、公共の建物にオストメイトトイレを設置して欲しい要望は42%~45%あります。

一方オストメイト対応トイレを知っている人は92.5%でほとんどの人が知っていますが、よく利用する、時々利用する人が39%です。

これからも設置場所の増加や周知が進むことにより使用する人が増えて不安感の解消や環境の向上に役立つでしょう。

和式トイレで対応する

外出先で和式トイレしか見つからない時は汚物の処理に困りますが、トイレの床がきれいな場合には便器の外側にペーパーを折りたたんで敷き、膝をついて汚物を流すのも一つの方法です。

ストメイト対応トイレと探し方のまとめ

オストメイト対応トイレと探し方
オストメイトにとっては、外出する際にオストメイト対応のトイレについて情報を持っていることは安心感に繋がります。

見かたを変えればそれだけ、オストメイトにとって漏れることは精神的なストレスになるということ。

身近な方でオストメイトの方がいる場合は教育や協力してあげて頂けると幸いです。