認定看護師として勉強会を依頼されることが多くなりました。
皆さんも、学生の頃よりも勉強会のために学習したり調べたりと時間を費やすことも多いのではないでしょうか。
専門領域を勉強していくことは看護師として日々発展する医療に適応していくためや、患者により良い看護を提供していくために必要なことです。
しかし、実際に勉強会など主催する側になってみると、自分の学んだことを他の看護師に伝えることが難しいことに気づくのです。
本記事では、勉強会を成功させるための事前準備や資料を分かりやすく作成するコツについて、話していきます。
看護師の勉強会のテーマ例と選ぶ注意点
勉強会にはそれなりの時間を費やしますので、その分、今後の看護に活かされる内容である必要があります。
看護師の勉強会テーマ
- 急変時対応
- 看取り看護(エンゼルケア)
- 褥瘡対策
- 患者の対応の仕方
- 口腔ケアと食事介助
- トランスファー
- 心電図の読み方
- ME機器管理
- 検査値データの読み方など
- 家族看護
- フィジカルアセスメント
- 薬剤に関しての知識
- 事例検討・事故防止(インシデント・アクシデント検討)
- 感染対策について
- 認知症看護について
- 家族看護について
- 疾患関連
- 正しい敬語の話し方
勉強会テーマを選ぶ注意点
勉強会でのテーマの注意点としては、3点あります。
- 誰でも分かる内容の勉強会テーマを選ばない
- 対象を広げすぎるテーマを選ばない
- 参加するメンバーに合わせて勉強会を実施する
看護師のスキルアップは時間が掛かり、勉強会1回では、すぐにスキルアップしません。
そのため、すぐに応用できるテーマが好ましいといえます。
また、テーマを広げすぎると、応用もしにくく、何の勉強をしたのか分からなくなってしまうので注意しましょう。
病棟全体での勉強会テーマの選び方
病棟全体での勉強会などの場合、全員が知らない内容や、全員が満足する内容の勉強会はレベルが違うため困難です。
そのため、ターゲットを決めて勉強会テーマを選ぶと、評価が高い勉強会を開催することが出来ます。
勉強会のテーマで悩んだ時は
以下で、勉強会のテーマの決め方のヒントを3つご紹介します。
インシデントをヒントにする
インシデントがおこるときにはいくつかの原因があるはずです。
環境の問題はもちろん、看護師の知識不足、介入不足などが原因になることもあります。
そこで、病棟内でインシデントとして挙がっているケースをチェックし、その原因をヒントにして勉強会のテーマを決めます。
▼インシデントをヒントにした勉強会テーマ
例えば、「抗生剤を開始し、しばらくしてから再度患者の元に行くと呼吸困難な状態であった」といったインシデントが挙がっていました。
ここから見えてくるのは、
「抗生剤の副作用の理解があったのか」
「なぜ発見が遅くなったのか」
という問題です。
これに対して、「抗生剤の種類や副作用について」、「抗生剤投与時の観察項目について」など、わからない部分を補い、または再確認し今後同じようなインシデントをおこさない対策となるテーマになります。
若い看護師の間で話題になっていることをヒントにする
ベテラン看護師になってくると、普段の業務に慣れてしまい疑問を感じることが少なくなってきます。
しかし、移動してきたばかりの看護師や若手の看護師は、「どうしてだろう?」と思うことがたくさんあります。
すぐに解決できるような疑問であればよいのですが、ベテラン看護師にも改めて学んで欲しいことや知識を膨らませて欲しいことが隠れている場合があります。
そのため、若手の看護師に最近の業務や先輩の指導、患者との関わりの中で「どうしてだろう?」と思うことを聞き出すことでテーマを決めることができます。
慣れてしまっているからこそ、誤った知識のまま処置や看護してしまっていることも少なくありません。
最新の看護師向け雑誌をヒントにする
医療や看護は日々進歩しており、それに合わせて私たち看護師も成長していく必要があります。
自ら知ろうとしなければ、看護学生時代に学んだことが正しいと思ったままになってしまいます。
そのヒントになるのか、医療、看護系の雑誌なのです。
医療、看護系の雑誌には、新しいエビデンスが載っており場合によっては、正しかったことが「間違い」になることもあります。
常にアンテナを張ってスタッフみなで学べる勉強会に活かしていきましょう。
▼新人看護師の方が新しいエビデンスに適用している場合が
新人看護師の方が新しいエビデンスに適応していることが多いです。
違った方法や考えに遭遇した時、「新人だから」、「学生だから」と調べもせずに指導するのではなく、今一度エビデンスの再確認をしてみましょう。
勉強会資料をわかりやすく作成するコツ
看護師の勉強会の資料を分かりやすく作成するコツを6つお伝えしていきます。
要点は最初と最後に述べる
よく勉強会に参加していて、結局何が言いたかったのかわからないことがあります。その原因は要点が適所で述べられていないからです。
せっかく勉強会で大切なことを伝えたいのですから、その事柄が印象に残るようにしたいです。
その方法として効果的なのが、最初と最後に要点を述べることです。
▼要点を最初と最後に述べる事例
例えば、褥瘡を防ぐためには除圧が大切ということを伝えたいとします。
冒頭で、まずそのまま「褥瘡を防ぐためには除圧が大切です」と要点を述べます。
その後、「なぜなら、皮膚や軟部組織が健康的な状態を維持するためには、栄養に富んだ十分な血液が運ばれる必要があるからです」というように、要点の理由を順に伝えていきます。
そして最後に改めて、「今日の要点」として「だから褥瘡を防ぐためには除圧が大切なのです」と伝えます。
このような順序でまとめることで、要点が印象に残りやすいのです。
話す流れやストーリーを意識しながら作る
勉強会が下手な看護師は、流れやストーリーがぐちゃぐちゃになっているケースが多いです。
「あ!これは後で説明します」などの流れがうまく行っていない資料は、最終的に何が大事だったのか分からなくなります。
そのため、
- 大きな目次を3つ、4つ作ってみる
- 流れの確認をする
- 配布資料以外に発表資料を別途作成し、自分が話しやすい流れにする
などの工夫が大事です。
勉強会がうまい、と思う看護師の勉強会を聞く場合、内容もしっかり聞いてほしいですが、どのような話の流れで説明しているかも注目して見ると、自然と勉強会もうまくなります。
文字大きく少なめにする
文字がたくさん並んだ文献を読もうとするとつい眠くなってしまいます。
また、パワーポイントなどのスライドを資料にすると、文字が多いために見づらくなかなか頭に入ってきません。
そのため、先に述べたように、要点や伝えたいことが印象に残るよう、文章にするのではなく、箇条書きにして「読む」のではなく「見る」だけで伝わるようにします。
印象に残りやすくするために、イラストを加えることや、図やグラフで表わすとすっきりとして見やすい資料になります。
後で書き込めるようスペースやメモ欄を入れる
勉強会の資料は、勉強会の時だけに使用するものではもったいないです。
その後も新しい情報を付け加えながらバイブルとして活用して欲しいです。
そのために、先にもお伝えしたように、あえて要点などをざっくりとまとめるだけにして、勉強会の最中や、その後の業務の中で学んだ情報を看護師自身が自分の言葉で書き込めるスペースを作っておきます。
いろいろ書き込んでしまって、何が書いてあるのかわからなくなってしまっては、せっかくの資料も付け加えた情報も台無しになってしまいます。
長く使っていけるよう、資料作りから意識してみましょう。
見ていて楽しくなるまとめ方
資料は見ていて楽しくなるような内容にすると看護師を引き込みやすいです。
先にもお伝えしたように、文字ばかりよりもイラストがあり、読むのではなく見ればわかる資料であることが前提ですが、それでも看護師は日々の業務の合間にある勉強会が「学ぶ場」ではなくウトウトと「休む場」になってしまいがちです。
そんな看護師を退屈にさせず、さらに学べる勉強会にするには楽しい資料にすることがポイントです。
漫画風にしたり、説明をみんなが知っているアニメのキャラクターに置き換えたり、親しみやすい医師や上司を登場させるのもイメージがしやすく楽しい資料になります。
デザインは凝らず、綺麗に見せる工夫を
資料を作るとデザインに没頭してしまい、肝心の内容がおろそかになります。
「何を見せるか」より「何を説明するか」が大切になります。
また、グラフや行などの列を揃えることで綺麗に見えます。
以上のように、列を揃えた場合、すっきり綺麗に資料を見せることが出来ます。
そのため、デザインよりも綺麗に見せる工夫を行いましょう。
勉強会を成功させるための事前準備
勉強会の発表を成功させるためには、事前準備が一番大切になります。
勉強会が、「うまい」「下手」や成功するかどうかは、事前準備で決まると言っても過言ではありません。
興味を引く呼び込みを行う
病院によりますが、勉強会は強制参加ではなく希望者が参加するスタイルを取っている病院もあるでしょう。
後者の場合、いくらわかりやすい資料を用意していても参加してくれなくては何もはじまりません。
そのため、参加希望者を募るために興味を引くポスターを貼り出すことをオススメします。
できれば資料はカラー印刷
元々カラーで作られた資料をモノクロで印刷した資料を手にしたとき、まず感じるのが「見にくい」ということです。
イラストがつぶれて真っ黒になっていたり、カラーの文字が薄く消えかかって見えたりします。
そのため、せっかく楽しい資料を作成したのであれば、カラー印刷をオススメします。
しかし、病院の都合上カラー印刷が難しいこともあります。
その場合は、モノクロでも見やすいように資料のカラーを調整するようにしましょう。
伝わる話し方を練習する
勉強会をするためには、資料だけでは不十分です。
資料に加えて相手に伝わりやすく話せるよう、発表原稿をつくり、それを録音しながら実際に読み上げて確認するようにしましょう。
その際、
- 早口になっていないか
- 聞き取りにくい言葉がないか
- わかりにくい表現はないか
- 話す順序は適切か
- 声のトーン、声量は十分かどうか
なども確認しましょう。
質問を想定した知識を得る
勉強会をおこなうと、スタッフ(参加者)から疑問がわいたり、新たな考えが出てきたりします。
また質問が多い勉強会は印象に残りやすく、自分にない視点に気づくチャンスにもなります。
そのため、あらゆる質問にできるだけその場で答えられるよう、自分自身も知識を深めておく必要があります。
内容によっては、勉強会で挙げたテーマに限定せず、テーマに関連する内容も再確認しておくようにしましょう。
勉強会で発表する時のポイント
最後に勉強会で発表する場合のポイントです。
大きな声を一番初めに出す
勉強会では「それでは始めます。よろしくお願いします。」など、一番初めに声を大きく出すことがポイントです。
全て大きな声で勉強会をしてしまうと疲れます。
しかし、話だしの声が小さいと、聞き手も聞く準備をしにくい場合があり、初めに大きな声を出すと良いでしょう。
緊張もある程度ほぐれます。
口癖や「えー」「あー」などの言葉はひかえる
口癖を繰り返す場合や、話の前に「えー」「あー」「ええっと」などの言葉が繰り返される場合、聞き手は聞きにくいです。
自分の口癖を理解し、注意しながら臨みましょう。
結論や伝えたいことを話す場合のパターンを決めておくと話しやすいです。
例えば、説明を行った後に「何が言いたかったかと申しますと・・・」や「ここで重要なポイントは・・・」など、締めくくる言葉を決めておくとスムーズです。
資料ばかり見ず、前を見て話す
発表に慣れていないと、どうしても恥ずかしくて下を向いたまま読み上げるだけになってしまいますが、前を見て話す意識をしましょう。
読み上げることは悪くないのですが、下を見ていることで回りの様子が目に入らず、話についてきているのか、理解しながら聞いてくれているのかなどを察することができません。
もし、戸惑う様子が見られたら、ペースをゆっくりにしたり、少し戻って詳しく説明することができます。
早口の方は、ゆっくり話すことや、聞きやすい速度で話すことも大切です。
適度に質問の場を設ける
勉強会の分量によりますが、ひとつひとつの内容ごとに一旦質問の場を設けるとよいでしょう。
先に進むにつれて内容が深くなる場合は特に、ここで疑問を持ってしまうと先の内容が分からなくなってしまう場合もあります。
もし、「ここらへんでわからない看護師がいそう」とわかる箇所があれば、その段階で質問できるように間を取ってもいいでしょう。
時には調べてない質問を受ける場合もあります。
その場合、「ここでは関係ない」などの態度を取るのではなく、「分からないので調べて皆まさに後で共有します」などの対応が必要です。
質問が出ることは、勉強会がスムーズに進んでいるということでもありますね。
マスクは外す
これは意外と多いのですが、看護業務の延長でマスクを着けたまま勉強会をはじめてしまう方がいます。
マスクがあると声がこもって通らなくなってしまい、聞き手には聞こえにくい声になります。
そのため、勉強会をはじめる前にはマスクを外したかチェックしましょう。
看護師の勉強会資料をわかりやすく作成する手順まとめ
勉強会は資料の準備から発表の準備、そして当日と大変なことがたくさんあります。
勉強会で人に伝えられる資料を作成し、そして発表するためには自分が知識を得ておくことが大切です。
その努力は確実に自分自身の力として蓄積していきます。
勉強会の担当になったら「面倒だな」と思う方が多いと思いますが、自分自身のスキルアップのためにもぜひ、ためになる勉強会を目指してください。