私は総合病院でストーマ外来を行っていました。
ストーマ周囲にスキントラブルが起きてしまうと苦痛を感じるだけではありません。排泄物が漏れやすく、管理することにとても苦労する状況になり精神的にもとても辛い状況になります。
本記事はストーマケアに悩む方に向けて、ストーマ外来でお伝えしてきた内容について話していきます。
ストーマ周囲がただれたり、かぶれた時は
トラブルが起こってしまっても焦らずに、まずストーマ周囲の皮膚の観察をしましょう。以下のことを観察しましょう。
- ストーマ周囲にシワやくぼみがある
- ストーマが平坦・陥没ぎみ
- 装具の穴の大きさが自分のストーマの大きさと合っていない
- 装具の交換時期が遅い
- 装具を交換するときに石けんで十分に洗っていない
*ひどい場合には医師・看護師に相談しましょう
皮膚に排泄物がつく状態を改善する必要がある
ストーマ袋(パウチ)の貼り方について振り返りましょう。
今までの貼り方がうまくいっていないと排泄物が漏れてしまいます
装具交換の時期は装具によって違います。
面板の穴から1㎝ぐらい外側まで溶けた時が交換時期です。
面板の中には溶けないでふくらむ種類もあります。
ストーマ周囲にシワやくぼみがある場合
ストーマ周囲にシワやくぼみがある場合は装具を凸面のある面板(コンベックスタイプ)に変更したり、板状皮膚保護剤(ウェハー)などで皮膚の補正をするなど工夫をしてみましょう。
板状皮膚保護剤(ウェハー)、パテ状皮膚保護剤(パテ)、ペースト状皮膚保護剤(ペースト)、パウダー状皮膚保護剤(パウダー)の使用などの検討をしましょう。
*ひどい場合には医師・看護師に相談しましょう
ストーマ周囲の皮膚を石けんで十分に洗いましょう。また石けんは十分洗い落としましょう。
石けんは、皮膚のただれ、かぶれの原因にもなりますので、丁寧に拭き取るか、シャワーなどで十分に洗い流しましょう。
面板がはがれにくい時は
皮膚が乾燥している、汗をかきにくい体質の方が起こりやすいので、剥がす時に乱暴に剥がすとスキントラブルの原因になってしまいますので、気をつけるようにしましょう。
面板を無理に剥がすと皮膚を痛めるおそれがあります。
石けんをつけたガーゼや溶解剤・剥離(はくり)剤(リムーバー)を用いてやさしく丁寧に剥がすようにしましょう。
剥がした後は石けんでよく洗い流しましょう。
かゆみや痛みに伴って赤くなっている時は
トラブルが起こってしまっても焦らずに、まずストーマ周囲の皮膚の観察をしましょう。
以下のことを行っていないか振り返ってみましょう。
- 面板もしくはテープが皮膚を刺激している
- 交換の時期が早すぎる
- 面板を剥がす時に少々乱暴にはがしている
装具交換の時期は装具によって違います。
面板の穴から1㎝ぐらい外側まで溶けた時が交換時期です。
面板の中には溶けないでふくらむ種類もあります。
自分に合った装具を探してみましょう。
他の製品を使用してみたり、皮膚被膜剤の使用など工夫をしてみましょう。
かゆみの種類について
かゆみの原因は大きく分けて以下のようなものが考えられます。
- 赤くなるが比較的弱いかゆみ・・・装具交換によるかゆみ
- 痛みを伴うかゆみ・・・排泄物の漏れによるかゆみ
- かきむしりたいかゆみ・・・真菌(かび)や接触皮膚炎、アレルギーによるかゆみ
かきむしりたいかゆみは、今までスキントラブルのなかった方でも起こります。
真菌は抵抗力が衰えているときに皮膚環境が悪くなると起こりやすくなりますし、接触皮膚炎やアレルギーは装具交換の際の皮膚保護剤等の刺激が原因となって起こる場合もあります。
皮膚症状は慢性化して皮膚のバリア機能が壊れるとますます治癒に時間がかかってしまいます。
このような場合は皮膚そのものの治療が必要になるため、できるだけ早く皮膚科を受診されることをお勧めします。
ストーマの周囲に赤い湿疹がある時は
トラブルが起こってしまっても焦らずに、まずストーマ周囲の皮膚の観察をしましょう。
以下のことを観察しましょう。
- ストーマ周囲が毛深い
- 汗をかきやすい
ストーマ周囲が毛深い方は、面板を貼る部分の毛を電気ひげそりで定期的に剃りましょう。
カミソリを使うとストーマを傷つけるおそれがあるので、電気ひげそりで行いましょう。
ストーマ専用の電気ひげそりを作ることをお勧めします。
ストーマ周囲を洗った後、乾燥させましょう。
装具交換時にはストーマ周囲を石けんでよく洗い、10分程乾燥させましょう。
ストーマから出血した時は
トラブルが起こってしまっても焦らずに、まずストーマの観察をしましょう。
以下のことを行っていないか振り返ってみましょう。
- 面板の穴が小さい
- ストーマを強くこすったり、ベルトなどで締め付けている
少しでしたら心配ありません。
ガーゼや脱脂綿などでしばらく圧迫しましょう。
出血が止まらない場合や大量に出た場合は医師の診察を受けましょう。
面板の穴が小さい場合
ストーマの大きさを正確に測ってストーマより1~2㎜大きめに面板に穴をあけましょう。
ベルトやウエスト位置、しめる強さを調節します。
ベルトがあたる場合は、サスペンダーを使用するなどの工夫をしましょう。
ストーマに白いしみがある時は
トラブルが起こってしまっても焦らずに、まずストーマの観察をしましょう。
- 尿が漏れている
- 水分摂取が不足している
- 装具交換がうまくいっていない
尿路ストーマの場合、ストーマの粘膜やその付近に白い結晶ができることがあります。
ストーマに尿の塩類が付着したものです。通常、尿は酸性で、皮膚も弱酸性です。
しかし、尿が濃かったり、感染を呈している場合などでは尿がアルカリ性になってしまうために起こります。
対処はお酢、水分、クランベリージュースです。
- 装具の交換時、皮膚・粘膜の病変部に、お酢と水を1:1で薄めたものをタオルやガーゼ等を用いて湿布します。長い時間湿布する必要はなく、15分くらいでも効果はあります。
- 水分の不足は却って尿路感染を悪化させてしまうことがあります。心臓や腎臓等に異常が無い限り、水分の摂取を心がけ、成人なら2リットル/日を目標に摂取しましょう。
- クランベリーに含まれるキナ酸が効果があり、クランベリージュースを嗜好品に取り入れるのもおすすめです。
生のクランベリーは、梅干しより酸味が強いため、量を摂取するには、ドライフルーツやジュース、ゼリーといった加工食品が便利です。
漏れの原因をつきとめましょう。
適切な装具交換ができていないと、尿が漏れて発生しやすくなります。
メーカーが提示している交換時期を守っていても漏れる場合は、ストーマ周囲にくぼみやシワがあることで、装具がフィットしていないことも考えられます。
その場合は別の装具についても検討してみましょう。
ストーマの周囲がふくらんでいる時は
ストーマは時間の経過とともに形、大きさともに変化します。焦らずに、まずストーマの観察をしましょう。
- ストーマのまわりがおっぱいのようにふくらんでいる
- くしゃみをしたり、座った状態から立ち上がる際に膨らみ方が変化する
- 仰向けに寝ている時と立っている時では、お腹の出具合が変化する
身体の向きや位置を変えて変化するなら傍ヘルニアの可能性があります。
傍ヘルニアは、ストーマ造設術に伴う合併症のひとつで、ストーマのまわりがおっぱいのようにふくらんできます。
腸閉塞や嘔吐・腹痛などの消化器症状が断続的に起きない限り、また、一日中装具がすぐに剥がれてしまうような状況でなければ、再発の可能性が高いため、通常再手術は検討しません。
傍ヘルニアが原因で装具がはがれやすい場合は、ケアのコツがあります。
- 面板の形状は四角ではなく丸いものを選びましょう。
- 四角の面板である場合には、面板周辺をVの字にカットします。(1辺に最低1箇所、各角は必須)
- なるべく薄いものを選びましょう。多品系より単品系がよいようです。
- ストーマの大きさは、仰向けになった状態ではなく、座った状態のときに計測しましょう。(仰向けでは皮膚が伸展しストーマが大きくなり、面板と皮膚の間に排泄物がもぐりこみやすくなるため)
- 少し大きめに面板ストーマ孔を開けます。
- 服装は、ゆっくりめを選びましょう。(チュニックやポンチョはお勧め)
- 温泉では、思い切って排泄物がでない時間帯にミニパウチなどを貼って入る方法もあります。
- 腹壁の形状が変化しやすいせいで、面板の辺縁部分がかぶれやすい時には、被膜スプレーなどを活用しましょう。
ストーマが脱出している時は
ストーマは時間の経過とともに形、大きさともに変化します。
焦らずに、まずストーマの観察をしましょう。
- ストーマ全体が飛び出している
- 飛び出しているせいで装具がうまくつけられない
ストーマが飛び出している場合は小腸の脱出が考えられます。
脱出で一番問題になるのは装具との関係です。
脱出がひどくて装具があわない場合には交換が難しくなったり、漏れやすくなったりすることがありますので、早急なストーマ外来受診をお勧めします。
またストーマが永久なのか一時的なのかということにも関係しますが、少なくとも脱出は増悪することがあっても自然に治ることはありませんので、一度診察を受けられたほうがよいでしょう。
手術手技、材料も近年かなり変化してきています。特に永久であれば今後の時間を考えると、手術が必要と判断された場合には受けられることをお勧めします。
手術を受ける前の生活に近づける
ストーマ外来の目的は手術を受ける前の生活に近づけるように支援することとされています。
ストーマ造設をされた方が精神的にも肉体的にも辛い状況が、早期に改善していければと願います。