人口の高齢化が話題になっている日本では、慢性疾患を抱えて生きる方の増加が課題になっています。
2025年をくぎりに、要介護状態となったとしても、自分が長年生活してきた住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けていけるように、医療や介護など、生活支援を総合的に提供できるように構築していこうとしています。
その中で訪問看護ステーションは、医療と介護との最適な組み合わせを提供できる、もしくは提案できうる唯一の存在だと思います。
本記事は、そんな訪問看護の仕事について、働くメリットや求人の選び方などについて話していきます。
訪問看護とは
日本訪問看護財団では、訪問看護について、看護師などが居宅を訪問して、主治医の指示や連携により行う看護 (療養上の世話又は必要な診療の補助)と言っています。
また、 病気や障害があっても、医療機器を使用しながらでも、自宅で最期まで暮らせるよう に多職種と協働しながら療養生活を支援していくこととしています。
訪問看護は、療養生活を送る利用者、またそれをサポートする家族へのサポートをするサービスで、ご自宅や老人ホームやグループホームなどの施設へ訪問して、療養する上での世話をしたり、診察の補助を行います。
訪問看護の仕事内容
具体的な仕事内容としては、
- 病状の観察
- 清拭・洗髪等の清潔ケア
- 褥瘡などの皮膚の処置
- カテーテルの管理や人工呼吸器管理などの医療処置
- リハビリテーション
- 認知症のケア
- 終末期ケア
- 食事・排泄等のケア
- 本人・家族等への療養・介護指導
など多岐に渡ります。
仕事上の役割
訪問看護の時間は限られており、常に利用者のそばにいられる訳ではありません。
一方で病院に勤務する看護師と違い、同じ時間帯で複数の患者を持つということはありません。
その時間の中で問われていることを遂行することができます。
症状や身体状況を医師に報告して対処をしたり、医療的視点と介護的な視点を持ってケアマネジャーと連携を図ることで、安心して在宅で生活ができるように支援していくことが大きな役割となります。
訪問看護の仕事で必要なこと
訪問看護には興味があるけど、自分に務まるのかななどと不安に思っている方もいると思います。
看護師をしていると、訪問看護は病院でたくさん経験をしてからでないといけないとう話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、私の知り合いでも最初から訪問看護の現場で活躍されているいます。
どんなことが訪問看護に必要でしょうか。
状態を的確に観察して、関連機関へ説明・相談できる判断力・表現力
訪問看護はご自宅に実際に出向いて行うサービスです。
利用者とのやり取り、アセスメント、ケアの決定・実行、急変時の対処をすべて1人で行わなければなりません。
そのため、適切な判断力や看護ケアを提供できるだけの知識・技術とともに、自分だけでは判断しかねる場合でも、利用者の状態を的確に観察して、医師や同僚看護師、ケアマネージャー、他サービス提供者へ説明・相談できるだけの判断力・表現力が必要となります。
コミュニケーション能力の高い人
在宅の生活においては、訪問看護の支援だけで成り立っているものではありません。
在宅の生活において、多職種の支援にかかわる専門職がその人に合った、その人らしいサービスを提供していきます。
訪問看護師には、多職種との関わりが必要となり、コミュニケーション能力が求められます。
訪問看護の仕事で活かせる経験
訪問看護は医療の分野だけではなく、介護の分野も関わることになります。また、訪問看護ステーションは経営としてかかわる業務も存在します。
そのために看護、介護以外の分野の知識や経験なども生かせることもあります。
病院での看護師経験
訪問看護として働いている人の大部分が病院での看護師を経験しています。
基本的な知識や技術は病院での看護と訪問看護とでまったく変わりません。
年齢層も0歳から100歳、110歳とどこまでもが対象者ですし、抱えている疾患も様々です。
そういう意味では様々な科や対象者を経験している方のほうが訪問看護は活躍できる場合があります。
訪問看護を考えている方の中には、ICUで全身の観察・アセスメントの知識・技術を勉強したいと考えている方も多いと聞きます。
ケアマネージャー、介護福祉士、ホームヘルパーなどの福祉職
訪問看護は医療の分野だけではなく、介護の分野も関わることになります。
実際現場で働いている方の中でも多くの方がケアマネジャーの資格を持っています。
在宅で必要な保険制度や介護の専門知識、サービスの種類などの知識を持っていることはとても便利となります。
介護福祉士やヘルパーは、訪問看護師として働いている中で連携を多くとる職種の1つとなります。
看護師が訪問しない日にはヘルパーに薬の管理をお願いしたり、状態を観察してもらったり、情報を頂いたりとお世話になることが多いです。
介護の分野で働いていたことがある人ですと、その人が、元来持っている強さ・力に注目して、それを引き出し、活用していくケース・マネジメント理論である「ストレングス・モデル」を理解している方が多いため、訪問看護に転職してもやくにたちます。
一般企業の営業職や事務職
ケアマネジャーや病院のソーシャルワーカー、包括支援センターなど訪問看護のサービスまでつないでくれる職種の方に、ステーションの存在を知ってもらうためにあいさつ回りやプロモーション活動を看護師自身が行うことがあります。
どのようにアプローチするのかということも、営業をこなしていた方であれば活かせます。
また、事務員がいない訪問看護ステーションも多々あります。
その際には自分たちでエクセルなどで報酬計算をしたり、ワードを使って手紙を作ることもやることがあります。
実際に看護師でパソコンがうまく使えない方はたくさんいます。
私もパソコンに詳しくない方達と訪問看護ステーションを立ち上げたので、パンフレット作りや報告書のひな型作り、勉強会の資料作りなどを行っていました。
訪問看護で働くメリット
ここでは訪問看護で働くメリットについて説明していきたいと思います。
一人の利用者とじっくり向き合える
病院では複数の患者を受け持つことがほとんどであり、1人の患者だけかかりっきりになるということができません。
ナースコールで呼び出されたり、検査で呼び出されたり、手術患者がいたりとイベントがあればそれを優先させなければいけないため、自分がこうしたいと言っても後手後手に回ってしまうことが多いです。
しかし、訪問看護は決められた時間、決められた自宅へ訪問している間は、そのことだけ考えていればいい時間となります。
利用者と1対1でもしくは利用者の家族と話し合う時間も作ることができ、よりよい看護をすることに取り組むことができます。
退院というものが存在しないため、家で生活するうえで問題があれば長い期間関わることになります。
長い期間関われるということは、深い信頼関係を築くことも可能ですし、考えた分だけその人の生活がいい方向に変化していくことを感じとることも可能です。
責任は重いと思いますが、その分やりがいも感じられます。
病院などで「時間に振り回されてばかりで大した関わり・看護ができないまま退院してしまう」等の葛藤を生じている方には是非とも訪問看護をお勧めします。
夜勤がない
訪問看護には夜勤はありません。
ですが、オンコールと言って電話当番が存在します。
時間外で利用者の方の相談を受けたり、緊急性が高かったり、訪問して処置などを行わなくてはいけない場合は、夜、夜中、朝問わず訪問しなくてはいけません。
年齢が進むにつれて、日勤や夜勤など不規則に生活すると体調を壊しやすかったり、疲れがとれにくくなったりすることもありますので、生活のリズムを安定させたい方にはおすすめです。
訪問看護師のキャリアについて考える
特定の分野においての知識や能力を生かすという意味では、認定看護師・専門看護師の資格を取ることです。
訪問看護との関連分野として、認定看護師には「訪問看護」専門看護師には「在宅看護」がありますが、それ以外の分野もまったく関係ないということはありません。
資格を持っている看護師が在籍しているステーションだとわかれば、その分野の看護を必要としている利用者は安心できると思いますし、ステーションのアピール材料にもなります。
この資格の他に助産師や社会福祉士、ケアマネジャーなどの資格を取得することも自分が思い描いている看護をするうえでの手段のひとつだと思います。
管理者になる、自分で訪問看護ステーションを立ち上げて経営者になるということも選択肢のひとつだと思います。
管理者は訪問業務に加えて、関係各所の連絡調整や利用者の情報管理、ステーションスタッフの労務管理や統率、経営管理の役割もあります。
組織の中で働いている以上、自分の理想を掲げて、それを実現することは難しいですが、管理者もしくは経営者としてなら、そういった看護体制の提供やサービスの提供も可能です。
訪問看護の求人の選び方や注意点
訪問看護師になりたいと思うが、求人広告などを見て、どういうポイントで職場を探したらいいのと思う方もいると思います。
求人の選び方や注意点のポイントについて話ていきます。
雇用形態から探す
雇用形態にはおもに正社員とパート・アルバイトの2種類があります。
違いとしては「時間を選んで働けるか」ということになります。
正社員の場合、基本的に日勤のみ週休2日制がほとんどだと思います。
パート・アルバイトの場合は結婚・出産などで働ける時間が限られているとか、夜間の電話対応や緊急訪問などは行えないという方にお勧めします。
仕事内容としては、正社員とほぼ変わりない所が多いため、高めの時給設定です。
時間ではなくて、1件だけとか3件だけとか件数で設定できる職場もあるのが特色のひとつだと思います。
会社の業態から考える
訪問看護ステーションの中には精神科に特化していたり、難病に特化していたり、小児に特化していたり、リハビリに特化していたりと様々です。
自分が得意な分野、やりたい分野があれば、そういった特色のあるステーションを選ぶと、よりやりがいを持って働けるかと思います。
また病院などの大きい法人が運営するステーション、全国展開させているステーション、小規模の運営法人などが運営しているステーションなど様々です。
大きい法人や企業の場合ですと、経営状態が安定していたり、教育制度やシステムもしっかりしている所が多く安心して働けますが、組織感は否めないです。
小規模だとその逆でアットホームに働けて、自分自身の要望や意見も反映できたりするメリットはありますが、経営状態が安定していなかったり、賞与など出なかったり、少ない人数で無理させられて働いたりとデメリットもあります。
自分自身が何を重視して働くかを考えて選ぶことが重要です。
給与や雇用条件から考える
24時間対応なのかは重要な要素です。
対応している場合は、正社員の場合は電話当番が必須となることが多いため、夜間や早朝に電話対応をしたり、訪問をしなくてはいけない場合があります。
しかし、その分オンコール手当や緊急訪問手当がつくため、給与はよくなります。
手当の計算方法も1カ月定額で決まっている所もあれば、当番回数、訪問回数に応じた手当が出るところなど支給方法は様々です。
オンコールがどのくらいの頻度であるかも確認しておいたほうがいいと思います。
多くのスタッフがいれば問題ないとは思いますが、スタッフが少ないと当番の回数も増え、プライベートの時間が少なくなる恐れがあるので注意が必要です。
中には24時間対応ではないところや正社員でもオンコールなしで雇用してもらえるステーションもあります。
給与に関しては、自分が働きたいエリアの給与の相場を調べてみて、平均的な給与を得られるステーションを選んで、後は条件などを加味することをお勧めします。
エリアから考える
地域によって、移動手段が異なります。
概ね15分程度の移動時間を考えて訪問エリアが決まっています。
東京都内などの人口密集地はエリアの範囲が狭く、自転車や徒歩などが多いと思いますが、町村区域など人口過疎地域になると、車での移動がほとんどだと思います。
車ですと狭い路地を通らなければならなかったり、駐車場が狭かったりなど大変な場合もありますし、事故を起こしたときは自己責任になってしまうこともあります。
車の運転が不得意だったり、地理を覚えるのが苦手と思う方は徒歩や自転車でも訪問できるようなステーションで働くことが無難です。
1日の訪問件数から考える
無理のない訪問件数は、1日4~5件と言われています。
それ以上の訪問件数になると体力的にもきつくなりますし、訪問看護は、訪問だけではなく、報告書の作成や会議の出席、関係各所との連絡なども業務内容に入っているので、訪問件数が多いと事務的な仕事は後回しになりがちで残業も多くなります。
1日に何件くらい訪問するのかを問い合わせや面談の時点で確認しておいたほうがいいと思います。
訪問看護の道に悩まれている方へ
訪問看護に興味があるのであれば、悩んでいないで飛び込んでみるというのがいいと思います。
仮にそれで合わないなと思ったり、ここの事業所では働きにくいなと思ったりしたならば、転職して違う分野に移るなり、ステーションを変えるなりすればいいことですから。
看護師免許さえ持っていれば、働けるところや必要としてくれる職場はたくさんありますし、大変なこともありますが、大胆に行動しても良いと私は思います。
訪問看護に興味を持たれて方にご参考になれば幸いです。