パラベンは、食品や化粧品の防腐剤ですが、一時期、その刺激性を問題視する情報が出回りました。
そのため、「パラベンは毒性が強い」「パラベンフリーの化粧品を使わないとお肌が危ない」などの印象を持っている方もいます。
だから、最近のエイジングケア化粧品や敏感肌化粧品、敏感肌化粧水などでは避けられることが多い防腐剤です。
しかし、パラベンは80年以上も前から使われる防腐剤で、刺激性は多少あるものの、化粧品に配合される濃度では大きな問題になる成分ではないのです。
本記事では、パラベンの特徴やパラベンフリーの化粧品のメリットやデメリットについて話していきます。
「パラベンが危険」となった経緯
今から40年ほど前、1980年に生まれた表示指定成分制度が要因となっています。
表示指定成分とは、使う人の体質によって、ごくまれにアレルギー等の肌トラブルを起こす恐れのある成分だから、容器やパッケージ等に表示しなくてはならないと決めたものです。
当時は化粧品を作る技術が乏しく、化粧品原料にはよくわからない不純物が含まれていました。
また、化粧品の安全性に関する研究も今ほど進んでいませんでした。
そのため、消費者に注意喚起を促すために113種類の化粧品成分を表記するように定めました。
このような表示義務を課せられると、何か悪い化粧品成分のように感じられ、パラペンは危険というイメージがついたのです。
一般に知られるパラベンのイメージ
表示指定成分制度に目を付けた一部の化粧品メーカーがいました。
このような化粧品メーカーは、指定成分に定められたパラベンを含む113種類の化粧品成分をまるで高い毒物がある成分のように批判しました。
そして、「指定成分が配合されていない化粧品こそ安心して使えるのだ」という事実を誇張した知識を、広告を使って人々に植え込んでいきました。
指定成分の中でもパラベンが危険された理由は、以下の3点です。
- パラベンは、防腐剤というカテゴリーで、合成物のイメージが強く、悪い印象を与えやすかった
- パラベンは優れた防腐効果を持っていたため多くの化粧品に配合されていた
- パラベンを叩くだけで、多くの化粧品に悪いイメージを植え付けることができた
こうして、パラベンは、刺激のある防腐剤としての烙印を押されてしまいました。
化粧品メーカー側のパラベンのイメージ
このように、一般の人に向けてはパラベンは悪者として扱われていたのですが、研究の現場では真逆のことが起きていました。
表示指定成分制度から時間が経過すればするほど、指定成分の安全性が高まってきたのです。
パラベンに刺激があるのは、パラベンという成分の問題ではなく、技術力や精製度の問題だったので、そこが改善されれば刺激が無くなるのは当然だったのです。
これは、他の指定成分にも同じことが言えました。
『全成分表示』制度へと移行
2001年4月、化粧品の『表示指定成分』制度が廃止されて、『全成分表示』が義務づけられました。
それまでは『指定成分』だけを表示すればよかった制度が廃止されて、化粧品に配合する全成分を表示する義務が課せられました。
指定成分表示制度が廃止されたことで、指定成分が悪者ではないということが、実証されました。
パラベンとは?
そもそも、パラベンとはいったいどんなものなのでしょうか?ここでは4つのポイントでパラベンについて解説していきます。
パラベンは化粧品の防腐剤の1種
パラベンとは、パラオキシ安息香酸エステルが正式名称の成分です。
パラベンは、化粧品だけでなく、医薬品や食品などに防腐剤として使用されています。
防腐剤といっても多くの種類がありますが、中でもパラベンは、広い範囲の微生物に対して抗菌力があり、毒性が低く安全性も高いことから、ポピュラーな成分として幅広い分野で活用されています。
化粧品にパラベンなどの防腐剤が必要?
化粧品は、グリセリン、アミノ酸、コラーゲン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、セラミドなどのさまざまな美容成分が含まれますが、これらは微生物が好む成分です。
だから、開封した後に微生物の対策を取らなければ、手についた雑菌などが化粧品の中に入った場合など、品質が低下してしまいます。
また、微生物によって、腐敗が進行してしまうと、元の清潔な状態に戻ることはありません。
このため、化粧品の品質を維持するには、抗菌作用によって防腐効果を発揮してくれるパラベンなどの防腐剤が必要なのです。
つまり、防腐剤としてパラベンを配合することで、化粧品を長期的にかつ安全に使用することができるのです。
パラベンパラドックスとは?
「パラベンパラドックス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
パラベンは、ほとんどの方で健康な皮膚に塗布したとしても問題はありません。
しかし、肌荒れや裂傷などに塗布すると、一転してアレルギーを起こすことが増えます。
つまり、パラベンはもとから、リスクが低い方には問題が起こることは少なく、逆にリスクが高い方には問題が起こる可能性が上がることから、「パラベンパラドックス」と呼ばれるようになったのです。
つまりパラベンは、傷がなければアレルギーの心配がほとんどない成分と言えます。
加えて、現在の日本では、パラベンの使用は「化粧品基準」によって使用量の上限が1%(100gに対して1.0g)と決められています。
しかも、市販の化粧品のほとんどは、パラベンの使用量は0.1~0.5%程度というのが実際です。
このように、パラベンは、基本的には低い含有量でも他の防腐剤と比べて優れた効果を発揮し、さらに安全性も高いので、パラベンを忌み嫌う必要はないのです。
パラベンとフェノキシエタノールの違い
パラベンとともに代表的な防腐剤と言えば、フェノキシエタノールです。
こちらは、
- パラベンが効きにくい微生物に有効
- パラベンより殺菌力が劣る
- パラベンよりもアレルギーのリスクが小さい
という特徴があります。
フェノキシエタノールは、最近では食品や化粧品などによく使用されます。
殺菌力が弱いことから、一般的にはパラベンより濃い濃度で配合しなければ効果が得られないことがデメリットです。
フェノキシエタノールは、1,3-ブチレングリコール(BG)やパラベンとも組み合わせて配合されることも多い成分です。
パラベンにしてもフェノキシエタノールにしても、肌質や肌状態によっては刺激になりますが、普通肌や脂性肌の方ではそれほど問題になることはありません。
パラベンの種類と特徴
パラベンにはいくつか種類があります。中でも代表的なものを、刺激のマイルドな順に4つご紹介しましょう。
メチルパラベン
正式名称は、パラオキシ安息香酸メチルです。
数あるパラベンの種類の中でも、水に溶けやすく一番肌への刺激が少ない成分です。
そのため、化粧品、特に化粧水の防腐剤としてよく用いられます。
メチルパラベンそのものの抗菌力はさほど強くないのですが、他の種類のパラベンと組み合わせることで抗菌力を上げることが可能です。
エチルパラベン
エチルパラベンは、広範囲の微生物に対する殺菌力をもっています。
無色の結晶または白色の結晶性粉末状の成分で、油溶性の防腐剤です。
メチルパラベンとセットで配合されている場合が多くあります。
プロピルパラベン
プロピルパラベンは、パラヒドロキシ安息香酸とプロパノールから作られる石油由来のエステルです。パラベンの中では刺激性が高いので注意が必要です。
ブチルパラベン
紹介した4種のパラベンの中で、最も抗菌力が高いブチルパラベン。
無色の結晶または白色の結晶性粉末状であり、水にはほとんど溶けない油溶性の防腐剤です。
ブチルパラベンは、環境ホルモンでないとは言い切れないと考えられています。
パラベンで控えた方がよい成分としては、ブチルパラベンです。
今ご紹介した4つは、パラベンの中でもよく使われており、1種類だけ配合されていることもあれば、4種類すべて添加されている場合もあります。
エイジングケアで安心なのは、メチルパラベンとエチルパラベンです。
パラベンフリーのメリットとデメリットは?
ここでは、パラベンフリー化粧品を中心にメリットとデメリットについて解説していきます。
パラベンフリー化粧品とは?
パラベンフリー化粧品とは、その名の通りパラベンを配合していない化粧品の総称です。
ただし、パラベンが入っていない=防腐剤が入っていない、というわけではなく、パラベン以外の防腐剤が使われていることがほとんどです。
化粧品には、期限を記載しない場合は、未開封の状態で3年間以上の保存が可能であるという条件を満たす必要があります。
防腐剤が入っていない場合、この条件を満たすことはほぼ不可能です。
だから、この条件をクリアするためには、何らかの防腐効果のある成分が用いられることになります。
消費期限が記載されていない時は、防腐剤無添加と書いてあっても、実際は防腐剤と同等の防腐効果のあるアルコール、1,2-ヘキサンジオール、ヒノキチオールなどの成分が入っているのでチェックしてみましょう。
もし、防腐剤が完全に入っていないとすれば、未開封で3年間の保存ができない場合がほとんどなので、消費期限が目立つところに記載されています。
パラベンフリー化粧品のメリットは?
先にもご紹介した通り、パラベン=なんとなく身体に悪いものというイメージを持っている人が少なからず存在します。
プロピルパラベンやブチルパラベンには注意が必要ですが、他のパラベンは低濃度なら防腐剤の中でも肌への負担が少ないので、パラベンフリーの化粧品をあえて選ぶことのメリットは少ないと言えます。
しかし、人によってはメチルパラベンやエチルパラベンでもお肌にとって刺激となってしまうので、パラベンフリーの化粧品を使う方がオススメです。
また、パラベンフリー化粧品の場合、パラベンに対してなんとなく危険なものというイメージを持っている人にとっては、心理的な安心感もメリットです。
化粧品にもプラセボ効果があり得るので、パラベンフリーの化粧品というだけで安心して使うことができれば、効果が期待できる可能性も否定できません。
パラベンフリー化粧品のデメリットは?
パラベンフリー化粧品そのものに、デメリットはありません。
ただし、パラベンで何も感じない方が、もしフェノキシエタノールや他の防腐効果のある成分で刺激を感じるなら、結果的にデメリットとなってしまいます。
つまり、パラベンフリー化粧品でパラベンを避けたことで、他の防腐剤の刺激を肌に与えてしまう可能性があることがデメリットになるのです。
もちろん、パラベンとフェノキシエタノールの両方に刺激を感じるなら、パラベンフリーでもフェノキシエタノールフリーであっても同じことです。
逆に、どちらでも大丈夫な方なら、特に問題にはならないのです。
エイジングケアの視点から考える化粧品と防腐剤
ここでは、化粧品と防腐剤の関係性に関して、エイジングケアの視点も交えて解説していきます。
防腐剤に神経質になる必要はない
結論としては、エイジングケアで防腐剤に神経質になる必要はないということです。
理由として、エイジングケアのためには、肌への刺激をできるだけ少なくすることがポイントとなります。
特に40代のエイジングケア化粧品や50代のエイジングケア化粧品では、お肌に優しいものを選びたいものです。
ここまで記事をお読みになった方はおわかりいただけると思いますが、その場合「パラベンフリー化粧品」を選べばよいわけではありません。
なぜなら、パラベンは入っていなくとも、他の何かしらの防腐剤や防腐効果のある成分が入っている可能性は高いので、それに刺激を感じてしまうリスクがあるからです。
だから、エイジングケア化粧品の選び方としては、やみくもにパラベンフリー化粧品だからよいと考えるのではなく、防腐剤や他の刺激のある成分を確かめて、お肌にとってなるべく負担の少ないものを選ぶことが大切です。
パラベンが、他の防腐剤より刺激性が高いわけではないので、パラベンに刺激を感じないなら悪い選択肢ではないのです。
例えば、フェノキシエタノールも安全性の高い防腐剤です。
アレルギーのリスクもなくよい防腐剤ですが、パラベンより配合濃度が高くなります。だから、パラベンが大丈夫でもフェノキシエタノールに刺激を感じる方がいます。
そんな場合は、パラベン配合の化粧品を使えばよいのです。
もちろん、多くの方はパラベンでもフェノキシエタノールでも問題ありません。
また、フェノキシエタノールが大丈夫で、パラベンに刺激を感じる場合もあります。
そんな方は、フェノキシエタノール配合の化粧品を使えばよいのです。
防腐剤に関しては、現在は研究が進んでいるので、パラベンまたはフェノキシエタノールを配合した化粧品の安全性はとても高くなっています。
敏感肌などお肌に合わない場合は使用を避けることが必要ですが、パラベンなどを配合した化粧品の方が、品質維持の点では心配が少ないのです。
気をつけたい化粧品の保管と使い方
パラベンフリー化粧品でその他の防腐剤もフリーであるものの場合は、消費期限に注意して清潔な状態で使用することを心がけましょう。
使用する時に皮膚に付着している雑菌が入って汚染されてしまった場合、腐敗や変色などが起こって、パラベンフリーかつ防腐剤フリーであっても、お肌にとっては危険です。
小ぶりの容量のものをできるだけ早く使い切るなど、使い方を工夫することが大事なポイントとなります。
なお、どんな化粧品にも言えることですが、正しい使い方を行うことがエイジングケアに有効です。
使用する前に、使う予定の化粧品の正しい使い方を確認して、お肌にとって最適の状態で用いるようにしましょう。
正しい使い方をすることで、化粧品の効果を最大限引き出すことができます。
パラベンより注意したい成分と使い方
エイジングケアを上手に実践するためには、パラベンや他の防腐剤以上に扱いに気をつけたい成分があります。
もちろん、それらの成分にはメリットもあるので上手な使い方をすればエイジングケアやスキンケアにとってプラスですが、誤った使い方をすればデメリットが大きくなるので注意しましょう。
アルコール
アルコールは、ふき取り化粧水、収れん化粧水、メンズ化粧水などでよく配合される成分です。
それは、殺菌、収れん、清涼などの効果があるからです。
しかし、刺激性や揮発性があり濃度が高いと乾燥肌の原因になることもあります。
エイジングケアの観点からは、高濃度のものは控えることをオススメします。
特に、乾燥肌、敏感肌、インナードライ肌の方は、ノンアルコール化粧品やアルコールフリー化粧品を使うことをオススメします。
尿素
尿素は、お肌の角質を溶かすことで手肌やかかとなどの角質肥厚に効果を発揮する成分です。
そのためハンドクリームやボディクリームに配合されることがあります。
しかし、長期間使うと未成熟な角質、必要な角質まで溶かしてしまうリスクがあることに注意しましょう。
AHA(アルファヒドロキシ酸)
AHAとは、りんご酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸などの総称です。
AHAは、フルーツ酸とも呼ばれます。
これらは、家庭用のピーリングアイテムに配合されます。
AHAの酸の力で角質を溶かしターンオーバーを促進して、お肌のごわつきの改善が期待できます。
しかし、使い過ぎは尿素と同じく未成熟な角質、必要な角質まで溶かしてしまうリスクがあるので注意が必要です。
PG/DPG
PGやDPGは、保湿効果もありますが、刺激性もある成分です。濃度が低ければ心配はあまりありませんが、高濃度の場合は注意が必要です。
全成分表示の1~3行目くらいまでに、PGやDPGの表示がある化粧品は、エイジングケアにはあまりオススメできません。
界面活性剤
化粧水や美容液に含まれる界面活性剤はあまり心配はありませんが、シャンプー、クレンジング料、洗顔料に含まれる界面活性剤の中には刺激の強いものもあります。
例えば、シャンプーなどに使われるラウリル硫酸Naなどは刺激に強い界面活性剤です。
肌に優しい界面活性剤としては、ラウロイルグルタミン酸Naなどのアミノ酸系界面活性剤がオススメです。
パラベンフリーのまとめ
パラベンとはどんな防腐剤か、また、その特徴やパラベンフリー化粧品のメリットとデメリットについてご紹介しました。
パラベンは低刺激で優れた防腐効果のある防腐剤で、化粧品をつくる上で有用性の高い成分です。
しかし、それでも刺激を感じる方もいます。
そんな場合は、フェノキシエタノールなどパラベン以外の防腐剤の化粧品を選ぶことも選択肢の1つです。
必要以上に悪者にされることもあるパラベンですが、メリットもあるので、パラベンフリーというだけでその化粧品を選ばないようにしましょう。
パラベンを正しく理解して、よりよいスキンケアを実践してくださいね。