皮膚症状がないにもかかわらず、皮膚掻痒症で引き起こされる強い痒みの原因はさまざまです。
皮膚掻痒症は、まず痒みの原因を突き止め、それぞれに適した治療が必要になります。
本記事は、皮膚掻痒症について話していきます。
皮膚掻痒症とは
皮膚には、どのような異常もみられないのに強い痒みがある場合は、皮膚掻痒症の可能性があります。
皮膚掻痒症は、全身に痒みがでてくる汎発性(全身性)掻痒症と、身体の一部分にのみ、痒みが起こる限局性掻痒症の2種類に分かれます。
それぞれ、原因が違うため、痒みがあらわれた原因をきちんと突き止めることが、治療の第一歩として重要となります。
汎発性掻痒症の原因
汎発性(全身性)掻痒症は、おもに乾燥と基礎疾患が原因で起こります。
乾燥が原因の場合は、さらに、加齢による老人性皮膚掻痒症と、妊娠による妊娠性皮膚掻痒症の2種類に分けられます。
乾燥が原因の場合
季節による気候の変化や屋内の湿度が低いなど、自分の周りの環境によって皮膚が乾燥し、強い痒みが起こることがあります。
乾燥が原因の皮膚掻痒症は、適切な保湿をすることが痒みを和らげるために効果的です。
▼老人性皮膚掻痒症
50代以上の男性に多くあらわれる老人性皮膚掻痒症は、皮膚の乾燥が原因となります。加齢により皮膚の表面を覆っている皮脂膜や、その下にある角質層の脂分が若い頃よりも減ってしまうことで、水分の蓄えが徐々になくなっていき、皮膚が本来持っているバリア機能が弱まってしまい、外からの刺激に過敏に反応するようになり、それが痒みを引き起こします。
痒い部分を何度もかきすぎると、皮膚に傷がつき炎症を起こしてしまいます。
炎症を起こすと、さらに痒みが強まるので、なるべく刺激しないようにすることが大切です。
▼妊娠性皮膚掻痒症
妊娠性皮膚掻痒症は、妊娠によって起こる環境の変化や、皮膚の乾燥がもとで起こると考えられています。妊娠するとホルモンバランスが代わり、女性ホルモンの分泌が増え、男性ホルモンの分泌が少なくなるため乾燥しやすくなります。
妊娠性皮膚掻痒症は、妊娠期間中つねに起こるわけではなく、妊娠中期から後期にかけてあらわれます。
その時期に、発疹などは見当たらないけれど、全身にチクチクとした痛がゆさを感じたり、ムズムズと強い痒みを感じたりするようなら、妊娠性皮膚掻痒症の可能性があります。
妊娠性皮膚掻痒症は、分娩からおよそ24時間以内には痒みが静まることがほとんどですが、強い痒みに耐え切れず、激しくかきすぎてしまうと、発疹ができたり、その範囲にぶつぶつができたり(苔癬化)してしまい、色素沈着してしまう可能性もあるので気をつけましょう。
▼基礎疾患が原因の場合
汎発性(全身性)掻痒症は、内臓疾患が原因でおこる場合もあります。腎機能障害や肝機能障害、ガン、悪性リンパ腫、または痛風や甲状腺疾患、血液疾患である鉄欠乏性貧血や多血症、寄生虫による疾患、薬剤中毒、精神神経疾患などがあてはまります。
疾患の治療のために使われる薬の副作用で起こることもあり、また、およそ8割の透析患者にも皮膚掻痒症の症状があらわれたりもしています。
基礎疾患が原因の場合は、その病気の治療が非常に重要になるため、皮膚掻痒症を発症したら、その原因をきちんと突き止めることが大切です。
限局性掻痒症の原因
限局性掻痒症は、身体の一部分にのみ強い痒みがあらわれ、女性の場合は外陰部(外陰部掻痒症)に、男性の場合は肛門周辺(肛門掻痒症)に起こることが多いようです。
女性に多い外陰部掻痒症の原因
外陰部掻痒症のおもな原因は、乾燥、感染症、皮膚過敏症の3つになります。
▼乾燥
閉経を迎える頃になると、女性ホルモンの分泌が少なくなるため、外陰部が乾燥しやすくなり、皮脂の分泌も減ってしまいます。それが痒みの原因となります。
▼感染症
トリコモナスやカンジダなどの膣炎やHPV(ヒトパピローマウイルス)による感染症も外陰部掻痒症の原因となります。
▼皮膚過敏症
身につけている下着や、生理用品などに刺激された外陰部の皮膚が過剰に反応してしまい痒みを引き起こしてしまうことがあります。また、膣洗浄のしすぎやおりものシートの使用によって、外陰部皮脂腺からの分泌液をとりすぎてしまい、それが原因でかゆくなることもあります。
男性に多い肛門掻痒症の原因
肛門掻痒症は青年期と壮年期の男性に認められ、お風呂上がりや眠っているときなど、身体が温かくなっているときに、強い痒みを感じることが多くなります。
肛門掻痒症の主な原因は、汚れ、洗いすぎ、かぶれ、痔などさまざまです。
▼汚れ
排便後に拭き残しがあったり、便秘などで肛門や直腸のなかに便が残っていたりすると、その便の刺激で痒みが起こります。通常は清潔を保つことで数日でよくなります。
▼洗いすぎ
反対にきれいにしすぎるのも痒みの原因になります。トイレットペーパーで何度も強くこすったり、温水洗浄便座のシャワー機能を使いすぎたり、入浴中に石けんなどで何度も洗ったり、タオルでこすったりすると強い摩擦により、痒みを引き起こすことになります。
▼かぶれ(接触性皮膚炎)
肌につける衣類や薬品、衣服を洗った時の洗剤など、触れた刺激やアレルギー反応で、痒みがあらわれることがあります。肛門の場合は、トイレットペーパーの色素や香料なども、その原因になることがあるので気をつけましょう。
▼痔
痔にはさまざまな種類がありますが、イボ痔(痔核)の場合は、イボ痔により出血してしまった血液や分泌物が肛門周辺についてしまい、それが原因で痒みを引き起こすことがあります。切れ痔(裂肛)の場合は、切れ痔になってしまった初期の頃や治りかけてきた頃に痒みがでてくるようです。
あな痔(痔瘻)は、肛門の横にできた膿が出る穴からでた膿で下着が汚れ、それによって肛門周辺がかぶれ痒くなります。
▼その他
排尿障害や、前立腺肥大、前立腺がんなどが原因で痒みをひきおこす場合もあります。これが原因の場合には、その病気の治療が最優先になるため、まずは、専門医のもとで痒みの原因をつきとめることが非常に重要です。
病気が原因の場合は、治療が最優先
皮膚掻痒症の治療は、かゆみの症状を引き起こしている原因が何であるのかを見極めることから始まります。
もし、何らかの病気が原因であるとわかれば、その病気を治療することになります。
皮膚掻痒症の原因となる病気としては、肝機能障害や腎機能障害をはじめとした、さまざまな内臓疾患や全身疾患があります。
乾燥が原因の場合は、保湿が基本
皮膚掻痒症の一番の症状は、皮膚のかゆみです。そして、かゆみを引き起こす原因に「乾燥」が関係していることが多いのです。
ですから、基本的な治療方法として、皮膚や粘膜の乾燥を改善するために保湿をしっかりおこなうことが重要になります。
主に使用されるのは、ワセリンや尿素を含んだ軟膏などですが、その肌症状や肌質に合わせた保湿剤を選ぶとよいでしょう。
これらの保湿剤をかゆみの出る場所にこまめに塗ることで、皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を補い、かゆみを和らげことに期待がもてるのです。
その他の原因に対する治療法
かゆみは、ストレスなどの心理的な要因で起こったり、増強したりすることもあります。
その場合、医師による十分なカウンセリングが行われ、症状によっては、抗不安薬が処方されることもあります。
そのほかにも、日常生活の中でできる対処法として、カフェインを多く含む飲料、アルコールや香辛料を控えることなども挙げられます。
また、肌に刺激を与える衣類を着用するのをやめたり、皮膚を清潔に保つための正しい入浴習慣、室内の湿度を適切に管理することなどをして、生活習慣や環境を見直すことで、皮膚掻痒症が改善することもあります。
かいてできた湿疹には、ステロイド剤を
皮膚掻痒症では、一度かゆみが出るとなかなかおさまらず、皮膚を傷つけるまでかいてしまうことがあります。
かきすぎて湿疹ができてしまった場合、ステロイド外用薬を塗り、治療することがあります。
ただし、ステロイド外用薬は、皮膚掻痒症を根本的に改善するものではなく、症状を抑えている部分が大きいので、外用薬を使いながら、体の内部からのケアも忘れずに行うとよいでしょう。
一時的なかゆみへのアプローチには、内服薬を使用
内服薬の服用で、かゆみを抑える方法がとられることもあります。たとえば、かゆみが特に強いときは抗ヒスタミン剤などを内服して、かゆみを抑えることがあります。また、漢方薬により皮膚の乾燥を軽くすることで、かゆみにアプローチをする場合もあるでしょう。
皮膚掻痒症のまとめ
皮膚掻痒症は、まず痒みの原因を突き止め、それぞれに適した対処法が必要になります。
場合によっては病院でお医者さんに診察をしてもらい、薬を使う場合もあるので心配な方は一度診察を受けてみましょう。